虹が晴れる

May everything be there.

音楽のよさはテキストで表せない。

どんなに優秀な音楽ジャーナリストのライブレポートでも伝わった感覚を得られたことはないし、楽譜ですらそこには演奏の指示しかなく、音楽そのもののよろこびは、そこにない。

聞いたことがある曲であれば、もしくは。しかし、それでも「落ちサビからラスサビ前の転調に至るきっかけところのブレスがたまらない」のような個別のテイクに対しての言及か、「年末のライブのあの瞬間を思い出して涙した」というふうな主観や記憶の描写で読み手に想像させるまでだ。

ひとりが感じた音楽の感触を、もうひとりが同じように感じることなどあるのだろうか。

いや決して同じでなくとも、同じ事象(ここでは音楽)から得た感情で、ふたりが共感できるならそれでいい。のだとも思う。

ライムスターのあたらしいアルバム表題曲『Open The Window』に感動してる。この楽曲が収録されたのは、ライムスターとして6年ぶりのアルバム。しかし収録全11曲のうち新曲は3曲のみ。そのほかは6年のあいだに単発で配信リリースされてきた楽曲で、つまりファンとしてはアルバムに対して抱く「新曲がたくさん聞ける」期待値が外れて、少なからずがっかりしていた。

が、発売されてみたらそんな気持ちを吹き飛ばすほどに、新曲のクオリティが高く、満足している。それにアルバム通して聴くと既発曲もなぜだか楽しめる。アルバムとして聞けるものになっている。

今回の収録曲の多くはタイアップがついていて、アルバム制作とは切り離されたものが多い。メンバーが出演したTBSラジオ「アフター6ジャンクション」6月20日放送のなかでも「ひとつひとつ目の前のオーダーに向き合っているだけで精一杯だった」「決して最初からこの形になることを想定して作られたアルバムではない」という趣旨のことを話していた。アルバムとしてのまとめを見据えることなく、それぞれの楽曲がバラバラに制作されていったというわけだ。楽曲がタイアップであればそうなってしまう。

しかし、その制作のなかのコラボレーションや無茶振り、これまで踏み込まなかった未体験のフィールドを経験するなかで、ライムスターは表現や手法を新たに開いていった。それを表題曲につけられた『Open The Window』というテーマで表現できる、それらを内包していることにメンバーが気づき、1枚のアルバムとして成立させる道筋が見えたのだという。非常に編集っぽい捉え方・名付け方だ。

なんだかながれでアルバム観点の小話を書いてしまったけれど、とにかく『Open The Window』ね、1楽曲として素晴らしいんで。5億点なんで。2023年のGood Musicなんで。本当ステキです。それでは聞いてください。ライムスターで、『Open The Window feat. JQ from Nulbarich』。

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